我×リリィシリーズSS※苦手な者はブラウザバック‼

我×リリィシリーズSS※苦手な者はブラウザバック‼
  • 1 ヘタレイ王 2017-03-24 12:51:44 Pkm1xu0gGXf91ad

    某絆漫画風に徐々に我が絆されていくだけのSSだぞ(*・ω・)

  • 2 ヘタレイ王(何度も投稿ミスした犯人) 2017-03-24 12:53:29 ArOoEFaCF8QdlpGV

    あっ、此処に載せれば良いのか?(*・ω・)

    • 4 はなの魔術師 2017-03-24 12:55:42 Pkm1xu0gGXf91ad

      >>2

      はい、お願いします。
      あ、名前間違ってますね…ゴメン!

      • 5 ヘタレイ王( 2017-03-24 12:58:01 ArOoEFaCF8QdlpGV

        >>4

        気にしないでくれ、改めてこの掲示板を利用する全ての者に謝罪する( ノ;_ _)ノ

        今後は此処に投稿していくので不要な板を建てたりはしない。
        未熟な我をどうか許してくれ……

        • 6 リライター 2017-03-24 13:02:50 do0DweLdKZWm6kl

          >>5

          割り込みすいません。私の方も間違えて、スレを建ててしまったので。マーリンさん、ヘタレイ王さん一個前のスレはスルーしてください。

  • 3 ヘタレイ王 2017-03-24 12:54:28 ArOoEFaCF8QdlpGV

    我×リリィのCP要素あり、苦手な者はブラウザバック‼
    某絆漫画風に徐々に我が絆されていくだけのSS(時折戦闘描写あり)



    今では当たり前に隣り合う距離……自然と繋がる手と手。重なる視線。
    それが余りに心地よくて、ついつい忘れてしまいそうになる……最初の頃、私と彼の間にあった溝ーそれを埋めることになった切っ掛けを……



    ???との絆…………0





    雨霰と吐き出された火球が猛威を振るう。
    大地を叩き割らんと振り落とされた前肢の圧力は人の身では到底耐えられない。


    『きゃぁぁ‼』
    『くそ……不覚を取ったか……‼』


    マスターの盾であるシールダーが倒れ、紅衣の弓兵も深傷を負って霊体化する。
    レイシフトの最中、突然現れた巨大な影……最強の幻想種、竜。それまでの戦闘で魔力を消耗していた私達はその暴威に蹂躙されつつあった。

    幸運にも私にはまだ立ち上がるだけの余力があった。
    一回だけなら宝具を展開する魔力が残っていた。
    しかし……

    『下がってろ嬢ちゃん‼俺はまだやれる‼』
    『リリィまずは回復を‼君の宝具じゃ倒しきれない‼』

    そう……この身は未だ旅の途中。
    騎士王と誉れ高き真名を冠しながら余りに未熟な私は……セイバーリリィ。
    紅衣の弓兵エミヤさんと蒼い槍兵クー・フーリンさんには言うに及ばず、マシュさんの様に強固な盾も持っていない。

    戦況を打開するに必要なのは速さではなく圧倒的な火力だ。
    未来の私なら……星の聖剣を保持する騎士王ならば、目の前の巨大な影にも屈することは無いのに……‼
    目を瞑って自己嫌悪に浸っていた私を呼び戻したのはー


    『くそっ……ここまで、かよ……』
    『クゥゥゥゥゥゥゥゥ‼』

    矢避けの加護も仕切り直しも、戦闘継続さえも使い果敢に戦っていた槍兵の英霊も遂には膝を着く。

    (もう、闘えるのは……私しか……)

    頭では分かっている。
    それでも……自分よりもずっと強い英霊達が倒されたのを目の前で見てしまった彼女の脚は止まり、選定の剣を握る手はー


    『戯け、何故我を早く呼ばん……雑種』

    (……え?)

    震えていた手をそっと押さえ、恐怖を取り除いてくれたのは見馴れない英霊だった。
    頭の先から爪先までを黄金の輝きが彩り、その全身からは強大な魔力と圧倒的な覇気を溢れさせていた。

    『ごめん王様…………俺、また……』
    『嫌悪に浸るのは後回しにしろ、ここで死なれては詰まらんのでな』

    黄金の英霊は眼前の竜など歯牙にも掛けないと言わんばかりに堂々と私達の前に立った。
    大きな背中……背丈はエミヤさん達とそう変わらないのに、まるで城壁の中に護られているかのような安心感を覚えた。

    『疾く失せよ……不敬であろう』

    その一声が発せられた瞬間、世界中から他の音が消えた。
    一瞬遅れて竜がそれまで以上の咆哮を挙げ、黄金の英霊目掛けて前肢を振り上げる。

    (盾も持っていないのに……避けない!?)

    そう、彼は……ただ右手を振っただけ。
    他の英霊が戦士として戦うのとは違う。まるでそれは指揮を執る音楽家のように……或いはーーー

    『2度は言わん……死ね』

    死刑を宣告する、暴君のようにー



    目の前で起きた現象を理解するまで10秒掛かった。
    突然現れた空間の歪みから発射された数十を超える宝具の数々ーそれは音に迫る速度で竜の全身に突き刺さり、切り裂き、破砕した。

    如何に疲労していたとはいえ、5人の英霊を圧倒していた竜を彼は……たった10秒で仕留めて見せたのだ。

    『高々Cランクの宝物にも耐えられんとは……所詮は雑種か、まぁ良い……』

    そこで初めて彼は私に振り返る。

    (……綺麗な人……)


    女の私が言うのも可笑しな話だが、確かに美しい英霊だった。
    男性でありながらその肌は女性のように透き通っていた。
    鼻は程よく高く、その瞳は宝石のように紅い。髪は黄金の全身鎧に負けないほど綺麗な金色で……


    『君臨するとはこう言うことよ‼』

    そう言って彼は威厳に満ちた声で、それでも何処か子供のように高々と笑っていた。



    英雄王ギルガメッシュとの絆………………0
















    ※ぶっちゃけ竜はクー・フーリンを倒した時点で虫の息でした。
    唯のオーバーキルからのドヤ顔、FGOあるある⬅

  • 7 はなの魔術師 2017-03-24 13:26:56 Pkm1xu0gGXf91ad

    色々とゴタゴタがありましたが、ここでは無事にスレ立てすることが出来ましたのでご意見ご感想などはここでお願いします…書き手のモチベも上がるしネ!

    ...いや〜、それにしても普段の渇いた生活に潤いを与えるね〜この手の話は………でも今度からはコーヒーを飲みつつ読むことにします(砂糖ダバァー)

  • 8 ヘタレイ王 2017-03-25 00:07:21 ArOoEFaCF8QdlpGV

    ※続き

    レイシフト帰還後……リリィは食堂のテーブルで茫然としていた。
    目の前の料理は相変わらず絶品なのに、何故かフォークが進まない。

    『どうしたリリィ?何かお気に召さなかったか』
    『エミヤさん!?いえいえお料理はとても美味しいです‼けどその……』

    初めて敗北を覚悟したあの瞬間
    目の前で霊体化していく仲間の英霊
    そして何より……

    ーーーーーーー『君臨するとはこう言うことよ‼』

    頭の中で反復される黄金の英霊の顔が頭から離れなかった。
    エミヤさんやクー・フーリンさんをも遥かに上回る絶対強者…自分が知る限りで最も強い騎士王や大英雄ヘラクレスさんでも彼には勝てないのではないかと戦慄した。

    そこでふと気付く、彼の名前を知らないことに。
    咄嗟に目の前のエミヤさんに訊ねてみると…

    『あぁそう言えば君は彼を知らなかったんだな……知らずに越したことは、等とは言えないか』

    苦虫を噛み潰した様な顔のエミヤさんなんて初めて見ました。
    騎士王の私や黒い私が食材を食べ尽くした時や、クー・フーリンさんからオカンと呼ばれた時でも苦笑していた優しいエミヤさんがそこまで表情を変えるなんてー

    『英雄王ギルガメッシュ…それが彼の真名だ。まさかあの残虐非道な男が味方になる日が来るとは思いもしなかったよ』

    残虐非道…?
    言葉遣いは荒っぽかったけれどそんなに悪い英霊には見えなかったと返すがエミヤさんは首を横に振る。

    『英霊の座に登録されている本体とは別人だが…私が過去に相対したギルガメッシュは最悪の強敵だったよ』

    エミヤさんの口から語られたギルガメッシュさんの行動の数々は私には思いもよらぬものばかりだった。
    汚染された聖杯を使って世界を滅ぼし、生き残るべき人達を選別しようとした等…私達が今戦っている相手にも迫るほどの悪行だ。

    『じゃあ…何でマスターはそんな英霊と契約を……?』

    マスターであれ平然と裏切り、笑って背中から刺すことも咎めない……そんな危険な英霊が味方に居るなど恐怖以外の何物でも無いではないか。

    その疑問は予測していたのだろうエミヤさんは手の中に夫婦剣を出現させ、軽く弄びながら言った。


    『私の扱う宝具は投影による贋作だ、という話は聞かせたな?』
    『はい、魔術で宝具を創れるなんてエミヤさんだけの特権ですよね』
    『そうだ、本物は創れないが真に迫ることは出来る。弓でも剣でも槍でも……私はほぼ無限に生み出せる』

    しかしーーー

    『彼は私以上の数の宝具を扱う英霊だがそれらは全て本物、それもあらゆる宝具の原典を保有している…………と言えばその異常さが分かるだろう?』
    『なっ…全部本物!?しかも原典って……』

    一人の英霊が持ち得る宝具は1つか2つが相場と決まっている。
    クー・フーリンさんの【刺し穿つ死棘の槍】、騎士王の私なら【約束された勝利の剣】、ロビンさんは【祈りの弓】と【顔の無い王】と言った具合だ。噂では万全の状態で召喚されたヘラクレスさんやギリシャ最速の英霊アキレウスさん等は5つ以上の宝具を持つと言われているが真相は定かではない。

    それを上回るどころか嘲笑うかのような無限の宝具、しかも原典という事は神秘性に置いて他の英霊が持つ同種の宝具をも凌駕するということだ。

    『剣の技量や身体能力こそ並だが、それを補って余りある無限の宝物。数多の英霊の中でもギルガメッシュの力は頂点の1角に数えられる…正に最強の英霊だ。マスターもそれが分かっているからこそ彼の召喚を何度も試みた…私達の戦う相手はそれだけ強大な英霊が居なければ立ち向かうことさえ叶わないと知っているからだろう』


    あまりの衝撃に言葉を失いながらも道理で強い筈だ……と納得する。
    ギルガメッシュさんはあの時『たかがCランクの宝物』と言っていた…数十本の宝具というだけでも驚異なのに彼の宝物庫にはそれを上回る強力な宝具が何百、何千…それこそ無限に存在しているのだ。選定の剣1振りしか持っていない私とは次元が違う。

    けれど………

    『じゃあ何で…あの人は私達を助けてくれたんでしょう?』

    知れば知るほどに疑問が沸き上がる。
    残虐非道な英霊なら、人の命を軽んじる暴君なら…私達に協力する動機が見当たらない。
    博識なエミヤさんでもその答えは分からないらしく言葉を濁していたが…それでもこう付け加えていた。


    『彼は私が以前出会った彼とは違う……だから味方だと言ったのだよ』と

  • 9 ヘタレイ王 2017-03-25 13:42:11 aB3x7bSMPE5uWosT

    エミヤ別れた後リリィは何時ものようにトレーニングルームへ向かう。
    霊基の強化はマスターから種火と呼ばれる高濃度の魔力結晶を貰わなければ出来ないが、技術は別だ。戦闘経験を積み、接近戦の技量を磨くことは決して無駄ではない。

    何より……

    (もう二度と…あんな失態は見せられない)

    恐怖に足が竦む騎士などマスターの剣として失格だ。
    技術を、そして心を磨く…それが未熟な自分に出来る唯一の道だと信じている。

    目的地の扉を開けながらリリィは折角なので他の英霊に模擬戦をお願いしようと思った。
    トレーニングルームには普段から多くの英霊が顔を出す。
    クー・フーリンさん3人衆やスパルタ王レオニダスさん、Mr.ゴールデンこと坂田金時さん等と言った男性だけでなく未来の私であるセイバーさんや牛若丸さん、聖女マルタ様、狩人のアタランテさん等の女性も少なくない。たまには遠距離戦の対処を覚えるためにアーチャーかキャスターの英霊に協力をー

    そんな考え事をしていた為にリリィは気付けなかった。
    トレーニングルームの空気が非常に緊迫していたという事実に……

    『英雄王、何故貴様が此処に居る‼』
    『何だ…また貴様か騎士王…退屈しのぎに散策していただけだぞ?何が可笑しい』

    騎士王…未来の私が部屋の中心で敵対心を隠さず対峙していたのは黄金の英霊……ギルガメッシュさんだった。トレーニングルームには他にも複数の英霊が居たが事の成り行きを静かに見詰めるだけで非常に静まり返っている。

    『えっと……セイバーさん、どうしたんですか?』
    『リリィ下がりなさい!この男は危険です‼冬木での件……私は何一つ忘れていない!』
    『そうか、我は何一つ覚えておらんが……貴様我に辱しめられでもしたのか騎士王?』

    何の表情も浮かべず首を傾げるギルガメッシュさんに、セイバーさんの顔が羞恥と怒りで赤くなる。

    『貴様……もう許さん‼構えろ英雄王‼決着をつけてくれる!』

    魔力放出による余波が周囲の空気を震わせる。
    流石に最上級英霊同士がぶつかり合ってはカルデアが持たないとジークフリートさんやゲオルキウスさん達が制止に動こうとするのと同時にー

    『下らん……』

    ギルガメッシュさんが踵を返して歩き出したのだ。
    構えるどころか背中を向けて無防備に…………これではセイバーさんは斬り掛かれない。
    背後からの奇襲など彼女の騎士道に真っ向から背く行為だからだ。

    『待て英雄王‼貴様どこまで私を愚弄する気だ‼』
    『思い上がりも甚だしいわ、我は貴様など知らん……』

    セイバーさんにとっては屈辱極まりない行動だがー私には別の意味で捉えられた。

    (違う…こうすることが一番手早く収集が着く……!)

    ギルガメッシュさんはセイバーさんを知らないと言ったがあれは嘘だ。
    騎士王である彼女が背中から斬り掛かれないと“知っている”からあの様な言動を取ったのだ。
    しかもあれだけ挑発的な言動を貫いていればー

    『まぁまぁ騎士王殿、英霊にも相性というものはあります。彼とは合わない、それでよいではありませんか?』
    『そうでござるよセイバー、久々に剣を交えて憂さ晴らしと洒落混まぬか?』

    聖人らしく諌めるゲオルキウスさんといい武人らしく手合わせに誘う小次郎さんといい、誰もセイバーさんを責めない。トレーニングルームでいきなり宝具を解放しかけたセイバーさんに同情している……否、ギルガメッシュさんの言動によって同情せざるを得ない空気を作らされているから‼

    『そっそうですね……済みません皆さん、私としたことが冷静さを欠いていました。気を取り直して鍛練に励みましょう!リリィ、貴女もー』

    騎士王が振り返った先に先程まで居た少女の姿はなかった。


    (下らん……実に下らん……)

    廊下を歩きながらギルガメッシュは顔に出さずとも苛立っていた。
    通常の聖杯戦争とは異なる召喚、50を越える英霊との共闘、人類の未来を取り戻すためのグランドオーダー……それなのに多くの英霊は何処か“浮かれて”いる。

    先程のレイシフトが正にいい例だ。
    盾持ちの少女と姫騎士は兎も角、贋作者に狂犬、それに門番の侍……聖杯戦争を経験している強者があの程度の竜に追い詰められるなど府抜けているとしか言えない。

    トレーニングルームに足を運んでみれば鍛練に励む英霊に混じって観戦と洒落混む作家やストーカーじみた英霊まで居た。あれでは真剣に取り組めるとは思えん。

    故に我自らが相手してやろうと渇を入れてみれば騎士王に邪魔され、こうして我は道化に甘んじて部屋に帰ろうとしている……これが茶番以外の何だと言うのだ?

    (所詮我は……奴等にとって余所者ということか……)

    未だ召喚に応じる気配を見せない盟友の姿を思い浮かべ、溜め息を吐き出ー

    『ギルガメッシュさん‼』
    『!?貴様……あの時の…………何の用だ姫騎士?』

    周囲を見渡すが他の英霊の魔力を感じない。
    まさかこの娘、一人で我を追ってきたのか?あれだけ周囲から疎まれてる我に?

    我が疑問を検証する暇もなく、少女は我にー


    『あの、私に稽古を付けてくれませんか!?』




    (…………………………は?)

    思考停止しかける脳を無理矢理再起動しながら状況整理。
    我に稽古を付けろ?自分の力量を考慮してないのか?そもそも我は危険だと認識してない?

    『その……ギルガメッシュさんは最強の英霊だけど剣の技量や身体能力は並みだってエミヤさんが』

    贋作者殺す、慈悲はない。
    短い付き合いだったなアーチャー、我は貴様のことはそれなりに買っていたぞ?
    思考回路が無礼者の処刑方法の模索に切り替わりつつあったが少女は気にせず話を続ける。

    『つまりその……ギルガメッシュさんとなら私と技量の差が少ないから手合わせに丁度良いですし‼それにギルガメッシュさんが技術を高めれば完全無欠です!お願いします!私の師匠になってください‼』

    余りに真っ直ぐな視線、疑いを知らぬ純粋さ……以前の我ならば慰みに汚そうとしただろう。
    だがー

    『面白い…………』
    『え?』

    未熟な剣士にすぎぬ技量とは裏腹に英雄王たる我に物怖じせず直訴する胆力、洞察力や思考も悪くない。退屈しのぎには良い逸材だ。

    『喜べ姫騎士、貴様の願いを我が叶えてやろう』


    我の言葉の一つ一つにころころと表情を変える少女に……我は無意識のうちに笑みを浮かべていた。

    その笑みの裏にあった感情に気付くのは…………そう遠くない未来だった。



    英雄王ギルガメッシュとの絆…………1

  • 10 ヘタレイ王 2017-03-27 23:08:02 P2dsq7HTXDFI9xa

    カルデア内トレーニングルームにて、甲高い金属音が響き渡る。
    英雄王ギルガメッシュと姫騎士セイバーリリィ、二人の英霊の剣と剣がぶつかり合う剣劇の調だ。

    『どうした、動きが遅いぞ‼』
    『戦いはこれからです‼』

    特訓と言うことでギルガメッシュの王の財宝は封印、換わりに宝物庫から選定の剣と同程度の宝剣を一振りだけ取り出して扱っている。
    接近戦は拙いと言われるギルガメッシュだが生前は一振りの剣と斧だけを携えて数々の怪物を打ち倒してきた英雄だ。慢心さえしなければそう簡単に遅れは取らない。

    加えてー

    『正面から受け止めるな‼貴様の強みは速さだ‼足を止めれば死ぬと思え‼』
    『はい!』

    ギルガメッシュの攻撃を正直に受けとめようとするリリィに渇を飛ばす。
    騎士王の剣は実直にして強烈、セイバーの英霊としてそれに焦がれる心理は分からなくもない。
    だがそれは、今の彼女には必要がない技術だ。
    筋力が違う、経験が違う、何より宝具の格が違う。
    何もかもが違うのに騎士王の剣を模倣すれば行き着く先は敗北だ。

    『無い物ねだりは弱者の逃避だ‼勝つためには自身の手の内を認め、磨け‼』
    『はい!』

    もっと強く、もっと先へ…高みを目指し剣を振るう姫騎士の姿は鮮烈にして可憐。
    激しいぶつかり合いの最中故に気付かれる事もなかったが…ギルガメッシュの口角は僅かに上がっていた。


    『よし、ここまでだ…休憩を挟むぞ』
    『はっはい、ありがとう…ございます…』

    一時間近く剣を合わせていた二人が一度距離を取る。
    英霊の身体能力なればこそ可能なハードトレーニング…人間ならばトップアスリートでも倒れ混むだろう重作業だ。呼吸も顔色も乱れないが精神の疲労は少なくない。特に緊張が抜け切らないリリィのストレスはギルガメッシュ以上だろう。

    『リリィ、受け取れ』
    『ぁ…ありがとうございます!』

    宝物庫に仕舞っておいたドリンクのボトルを2つ取り出すと片方をリリィに投げ渡す。
    緊張を解すには何かを口に入れるのが一番手っ取り早い。スポーツドリンクなど英霊には気休め程度の効果しかないが…リリィは喜んでボトルに口をつける。

    コクコクと喉を鳴らしてドリンクを飲むリリィに自然とギルガメッシュの口調も柔らかくなる。
    元より向上心の高い者は嫌いではないのだ。それに臆することなく自分を頼ってきた少女を扱き下ろす趣味もない。

    『こうして剣を合わせるのも3日目か、当初より遥かに見違えたぞリリィ』
    『ほっ本当ですかギルガメッシュさん!?』
    『王に二言も虚言も無いわ…貴様が腕を磨けば磨くだけ我にも良い刺激になる。基礎はもう充分だろう…次からは応用だ、魔力を十分に溜め込んでおけよ?』
    『魔力を…』

    その単語が聞こえた瞬間、少女の腹部が厳かに空腹を主張する。
    カルデアとマスターから魔力は十分に供給されているが、それでも食べる喜びは否定出来ないのが騎士王の系譜たる宿命だ。

    『全く貴様は……では続きは1時間半後だ、遅れるなよ?』

    苦笑を浮かべながらもギルガメッシュは武装を解き、リリィに食堂へ向かうよう促した。
    カルデアに居る英霊は精神衛生上と魔力供給の観点から食堂を利用する者も少なくないが英雄王は別だ。元々の魔力生成量が多いうえに王律権ダムキナによる魔力供給が常に行われているのだ、単独行動A+は伊達ではない。

    しかしー


    『ギルガメッシュさんも行きませんか?』
    『……またか』

    リリィはギルガメッシュの服の裾をそっと引っ張りつつ同行を催促する。
    初めに逢って以来何かと我を気に掛ける姿勢は悪くないが…この申し出は受け入れられない。

    『何度も言ってるだろう、我を歓迎する英霊なぞ此処には居らん。態々調和を乱す必要も無かろう…貴様一人で行け』
    『此処に一人居ます‼私にはギルガメッシュさんが悪い英霊には思えません‼』

    間髪入れずに真っ向から見つめてくる瞳…流石に同一人物、騎士王と同じ力強い目だ。
    だが……その光は、余りに眩しい。

    無意識のうちにリリィの手を引き寄せ、華奢な肢体を腕の内に抱き込む。

    『ほぅ…言うではないか。なら我がどの様な男か…骨身に刻んでやろうか?』

    そっと少女の顎を指一本で持ち上げ、顔を近付ける。
    騎士王と同一人物なのだ、この様な戯れは断固拒絶するだろう…そう高を括っていた我の傲慢な本質をー






    『い……痛いのは嫌です、けど……ギルガメッシュさんの事は、もっと知りたいです』
    (なーーーーーーー!!!?)

    リリィは一瞬で粉微塵に砕いてしまった。

    恐らく、と言うか確実にリリィは我の発言の主旨を理解できていない。
    しかし懸命に頭を捻り、その上で我を受け入れようとしたその精神は…途方もなく清らかで、喩え用もなく愛らしかった。

    慌てて少女の身体を放し、自身の胸に掌を押し当てる。
    心臓の動悸が鎮まらない…体内に収まらず溢れ出しそうな程に強く、高鳴っている。
    血液が顔面に集中しているかのように熱く、視界がぼやけそうになる。

    (何だ…この感覚は!?こんなもの……我は知らんぞ!?)

    恐怖と言うには余りにも温かい。
    欲望と言うには余りにも穏やかで、混乱と言うには余りにも心地よい。

    あらゆる財を、あらゆる快楽を手中に納めた王が…たった一人の少女に翻弄されるなど誰が予想できるだろうか?

    そして英雄王が我を取り戻すより早く…少女が願いを口に出す。

    『ご飯…一緒に食べましょう、ギルガメッシュさん』
    『………好きにしろ、戯けめ』

    満面の笑みを浮かべた姫騎士に引き摺られるように英雄王は食堂へと足を運ぶ。
    途中他の英霊達から好奇の視線に遠慮なく晒されるという屈辱があったにも関わらず、筋力も魔力も遥かに上回るにも関わらず…繋がれた手は振り払われる事が無かった。


    英雄王ギルガメッシュとの絆…2

    • 11 リライター 2017-03-27 23:19:10 I9qd3KgfHswqIOom

      >>10

      ……このギルガメッシュさんなら、呼びたいですね

  • 12 はなの魔術師 2017-03-27 23:31:27 Mq517xcgpCngaLc6

    なんだこの甘い空間は...こんなの見せられたら抗体のないぼくには毒...コフッ(砂糖ドバー)......次からはエスプレッソ持参だな...バタッ

  • 13 ミラマシュ 2017-03-30 01:44:45 ISa7dtKZTq8E5

    いやー甘々ですねぇ〜
    大好物です!ザラザラ…(^q^)

  • 14 狂スロット 2017-03-30 12:37:03 t4YL4sqGeal3xNYC

    (*´ω`*)(ほのぼのさが中々ですね)

  • 15 ヘタレイ王 2017-03-30 14:18:14 OPFc9nmUofctAzQA

    響き渡る剣劇、気迫と熱気がトレーニングルームに充満する。
    最早恒例と化したリリィとギルガメッシュの訓練だが今回は二人きりではない。

    『ほぅ…思いの外やるな、財宝を使い潰すだけが能ではなかったか』
    『良いぞ嬢ちゃん、金ぴかに目にもの見せてやれ‼』
    『リリィ殿‼そこです、金的です‼』
    『そこの狂犬2号‼後で躾をしてやる‼首を洗って待っていろ‼』

    先日の光景を見られてから少なくない数の英霊がギルガメッシュに話し掛けるようになったのだ。
    最も大半はリリィへの好奇の視線だったり、ここぞとばかりに弄りにかかるだけだが…確実に英雄王と周囲の距離は狭まっていた。

    『えっと…えっと…』
    『野次など気にするな‼教えた通りにやれ…往くぞ‼』

    それまでの軽やかな攻防から一転、ギルガメッシュが渾身の力で宝剣を振りかぶる。
    元より体格、筋力で勝るギルガメッシュの攻撃…リリィは受け流し、回避し続けるが…やがて限界が来る。

    壁際まで追い込まるリリィに斬り掛かるギルガメッシュ。
    後退は出来ず、跳んで逃げても背を晒す最悪の体勢…活路が有るとすれば真っ向から、力ずくで打ち倒すしかない。

    しかしリリィの筋力ではー

    『ハァァァァァ‼』

    選定の剣が唸りを挙げる。
    風に舞う花のように優美だった剣閃が、獰猛な獣のように力強く襲い掛かる。

    魔力放出ー騎士王アルトリアの戦術の中核を為すスキルだ。
    竜の心臓を持つ彼女の魔力は並の英霊を遥かに凌ぐ、それを変換し筋力に載せれば…大英雄ヘラクレスとも打ち合える‼

    そしてその威力は当然…ギルガメッシュの攻撃を遥かに上回る。
    宝剣を一方的に弾き飛ばし、返す刃でー

    『甘い‼』
    『え?…きゃぁ!!』

    選定の剣が襲い掛かるよりも早く、ギルガメッシュが身を屈める。
    そのまま勢いを殺さず足払いー剣以外に意識を向けていなかったリリィは見事に転倒する。
    しかし、少女の頭部が硬い床に衝突することは無かった。寸前に展開された王の財宝から伸びる純金の鎖がリリィの体をそっと受け止めたからだ。

    『エヘヘ…負けちゃいましたね』
    『いや、今の攻防は見事だったぞ。剣では完全に我の負けだった…許せ』

    リリィに手を伸ばし助け起こしながらギルガメッシュは苦笑する。
    剣の訓練で足払いを掛けた時点で反則…幾分かマシになったとはいえ負けず嫌いな性根は変わらないようだ。
    最早剣の腕ではリリィに勝てないと悟りながらも、最後の指導を口に出す。

    『分かっただろう?騎士王も貴様も肉体の状態は変わらん、つまり魔力放出のスキルも問題なく使用できるのだ。敵が複数回剣を交えて貴様の膂力を覚えたところで使えばー』
    『不意を突けるということですね!』
    『そうだ…戦法とは多ければ多いほどいい。そして敵に与える情報は少ないに越したことはない……今の貴様ならそうそう簡単に負けはしないだろう』

    これで我から教えられることはない…そう締め括ったギルガメッシュはそっとリリィの頭を撫でて微笑んだ。その表情は英雄王と恐れられる英霊には不釣り合いなほど穏やかでー

    しかし彼は忘れていた…数日前ならいざ知らず、此処には今…他にも英霊が居たことを

    『なっー!?』
    『ほぅ……』
    『滾る…筆が滾りますぞ…‼』
    『目も当てられん駄作(スイーツ)振りだな…!!』

    騎士王が絶句する。
    錬鉄の英霊がニヒルに笑う。
    太陽の御子は口笛を吹き鳴らし、童話作家と劇作家が筆を走らせまくる。

    『…………!!』

    時既に遅し、後悔先に立たず…!!
    ギルガメッシュは思わず目撃者全員を消し飛ばそうと王の財宝を開きー

    『エヘヘ…誉められちゃいました~♪』
    『………』

    目の前に居る姫騎士は周りがどうなっているか気にもせず、幸せそうな笑みを浮かべて居る。
    しかも今気付いたが、自身の手はリリィの頭を今尚撫で続けている。

    調子が狂う、何なのだろうこの娘は?
    本当に騎士王の過去なのだろうか?他人の空似では無い筈だがー

    『兎も角、これ以上我と手合わせしていても得るものは少ない。今後は他の英霊との連携を磨くことに専念しろ…解ったな?』

    一呼吸置いてリリィに特訓の終了を宣告する。
    これで約束は果たしたのだし、これ以上他の英霊に舐められるのも英雄王としての沽券に関わる…そう、それで良いのだとー

    『もう……一緒に特訓しちゃいけないんですか…?』
    『と思ったが貴様は飽くまでも我の極一部の実力しか知らんわけだな、良かろう…我の全霊を受け止められるようになるまで鍛え抜いてやろう‼』
    『本当ですか!?約束ですよ‼』


    前言撤回、神速の掌返しー!!
    余りのチョロさにアルトリアもエミヤも唖然とする。作家達は延々と執筆を続けていたがそれはスルー。
    クー・フーリンだけは『いや、それ無理だろ。それが出来たらとっくに騎士王超えるからな?』と冷静に突っ込んでいたが誰もそれに応えるものは居なかった。

    後日、ダ・ヴィンチ工房に二大作家の合同最新作『美少女と暴君~金を溶かすは可憐な花か』なる小説が売りに出された……と言うが真相は定かではない。
    何でも販売開始直後に何者かに買い占められ、作家二人は大量の宝具によってボロ雑巾のように叩きのめされ、原稿を奪われてしまったという噂が有るとか無いとか……


    英雄王ギルガメッシュとの絆……3

  • 16 リライター 2017-03-30 15:24:33 Tqw1RVRFY579MbcF

    お疲れ様です。(リリィ可愛い)

    そして、王様お疲れ様です。

  • 17 ヘタレイ王 2017-04-02 23:09:04 zv9xZQQMUt0cBhKa

    全てを手に入れてきた。
    あらゆる財宝、あらゆる名誉、あらゆる権力、あらゆる武功。
    抑止力として産まれしこの身に不可能などなく、我に敵など居なかった。

    故に心踊った…我に対峙できるだけの存在が居たことに
    故に友と呼んだ…伴に在る、それだけで心満たされたから
    故に絶望に暮れた…最愛にして最強の盟友さえ永遠では無いと見せつけられて

    不老不死の探究
    一度滅びた故郷の再生
    その果てに我は完成した。

    全てを視た者、王の中の王……英雄王ギルガメッシュとして。

    その我が何故だ、ただ一人の小娘に何故ここまで心掻き乱される?
    女に耐性が無いわけでは無いのだ。
    生前に何人もの妻を迎え、あらゆる快楽を貪った。
    人間の業を、欲望を愛したからこそ我は神を見限ったというのに……

    何一つ分からない。
    我は正気を失ったのか?
    雑種と嘲笑い畏れられた英霊達と戯れ合い、時に自分から手を貸すなど以前では考えもしなかった。
    崩れ落ちる敵の屍を眺め悦に浸るでもなく、背後の雑種を気に掛けるなど我には似つかわしくない。


    今分かるのはただ1つだけ。
    あの者が視界に映るだけで、あの声を聞くだけで我はー

    『ギルガメッシュさん‼』
    『ーーーッ!』


    物思いに耽っていた我の意識を呼び戻したのはやはり彼女の声だった。
    セイバーリリィ……いずれ騎士王となる白百合の姫騎士。選定の剣を引き抜いた直後の半人前の少女。

    最初は戦場の空気に呑まれ後込みしていた未熟者が、今ではカルデアの主戦力の1角にまで数え上げられるようになったのは我にも予想外だった。
    個の実力では中堅層、しかし他の英霊と協力し卓越した連携攻撃を得意とするリリィを未熟と嘲笑う者などカルデアには居ない。その事が何故か誇り高くー

    『その足取りと微かに緊張を伴った声は…………次のレイシフトに同行を許されたか?』
    『!凄いですギルガメッシュさん‼なんで分かったんですか!?』

    加速しかけた思考を宥め、努めて冷静に分析の結果を伝える。
    第4の特異点が発見された事
    リリィの走ってきた方角の先に管制室がある事
    そして先程マスターから我に念話が送られてきたことを踏まえ、尚且リリィが緊張を隠せずにいると言うことはー

    『善かろう……我に日頃の鍛練の成果を見せてみろリリィ、働き次第で褒美は惜しまんぞ』
    『お任せを‼全霊で期待に応えます‼』

    余程我の言葉が嬉しかったのかリリィは咲き誇る花のような笑みを見せる。
    騎士王でも贋作者でもなく、この我にだけ見せる特別な笑みだ。

    それ以上先を認めるのは……我には許されていない。
    でも今、目の前の可憐な華を慈しむ程度なら……許されても良い筈だ。

    『出陣の支度をせい……我を退屈させるなよ、リリィ?』

    向かう先は中世……神秘と科学の混在する魔境都市ロンドン。
    そこで我は1つの選択を問われることとなる。

  • 18 ヘタレイ王 2017-04-03 02:43:34 j5v8HcQCAlPESzaS

    新たな特異点へと足を運べる英霊は6人までと決まっている。
    複数の英霊との契約を可能とするカルデアの技術力を以てしてもそれ以上の人数は存在証明が追い付かなくなる為だ。
    デミサーヴァントの娘と我は毎回全ての特異点に同行しているがそれ以外は毎回顔ぶれが変わる。

    オルレアンでは門番(佐々木小次郎)と呪腕のが主だった活躍をし、セプテムではリリィや竜殺しが猛威を振るった。
    先の特異点であるオケアノスでは海上が主戦場だった為に遠距離砲撃に秀でる我や魔女が……と言った具合だ。

    今回は霧に覆われた都市……死角も多く障害物も段違いに多い。
    従ってどの様な状況でも対応できるようにと英霊のクラスは均一に振り分けられていた。

    卓越した古代魔術の担い手……裏切りの魔女メディア
    歴戦の槍兵……クランの猛犬クー・フーリン
    最強の1角と称えられし狂戦士……大英雄ヘラクレス
    そして花の姫騎士セイバーリリィを加え全6名、遠近中全てに対応力を持つ編成はそれなりに見事だと言える。

    しかし…………

    『あら、すっかり丸くなった王様も一緒なの?心強いわね』
    『なぁ金ぴか~こないだセイバーから聞いたんだが王の酒っての俺にも飲ませてくれね?』
    『…………(今度はサシで闘ろう、と目が語ってる…気がする)』

    生暖かい視線を感じる、これが演技でないなら大したものだ。
    と言うかこいつら覚えてないのか?

    我は雑種の襟首を両手で掴み挙げると思いきり揺さぶりながら胸の内に溜め込んだ感情のままに叫んだ。

    『おいこら雑種貴様この人選は我への当て付けか?何故依りにも因って全員我と少なからず接点のある(と言うかリリィとマシュ以外全員殺してる)英霊ばかり呼んだ?何か我に怨みでもあったか以前冬木にでも住んでたか貴様ぁぁぁぁぁ‼』
    『えちょ何でさって言ってる場合じゃな痛い痛い痛い‼』
    『先輩が死んじゃいます!?放してください王様‼』
    『ギルガメッシュさん止めてぇぇ!』

    そのまま1回絞め落とそうかとも思ったがリリィに背中から抱き締められた途端に怒りの感情が薄れて…ではなく、特異点修正が先だと思い直した我は寛大にも雑種を解放してやった。カルデアに戻ったら覚悟しておけ、ハムの様に縛って蛇女の部屋に投げ棄ててやる。


    こうしてロンドンの街へ進出した我達だったが…この時我は失念していた。
    この場所に置いて最も厄介な怪物が、霧の中から此方を覗いていたことを……





    『⬛⬛⬛⬛⬛ーーーーー‼‼』
    『これはどう?』
    『往きます‼』『任せなぁ‼』


    機械兵の強固な装甲をヘラクレスの斧剣が両断する。
    機械人形の大群を竜骨兵が足留め、聖剣と魔槍が端から切り崩していく。
    デミサーヴァントは無論、我には戦況を見渡す余裕さえあった。
    次から次に湧き出てくる物量は確かに厄介だ、相性が悪ければそのまま撤退も有り得ただろう。

    しかし人選はどうであれ戦力としては申し分ないこの面子ならばこの程度はー

    『……っ!?』

    我は今、アーチャーとして現界しているが千里眼という特殊なスキルを持っている。
    キャスター適性を持つ英霊でも極一部の大魔導師にしか与えられないそれが我に見せた光景ー

    それは………






    『ギルガメッシュ…さ…』

    セイバーリリィの腹が引き裂かれ、鮮血に沈むという未来だった。

  • 19 お団子の旅団団長リオ☆(真っ白) 2017-04-03 02:54:58 ZPOJplXf37LLbF

    いやあああああ!ギル様!リリィを助けて!

    • 20 ヘタレイ王 2017-04-03 03:13:22 j5v8HcQCAlPESzaS

      >>19

      此処まで来れば分かるだろう(*・ω・)次回は我VS聖女と一緒に福袋に詰められてた奴だ

  • 21 ヘタレイ王 2017-04-03 15:38:22 ebBqVo7w3Ucsh1ah

    全ての民草は王の為に生き、王は己の為に生きる。
    それが王の統制であり…王の中の王である我の生き様でもあった。

    千里眼は時折我に死を見せ付ける。
    近衛兵の恋人の病、祭司の両親の事故、そして……盟友の死でさえも

    最初は運命に抗おうとした。
    近衛兵に薬を渡し飲ませるよう伝えた…恋人の病は癒えた、後に別の病によって死んだ。
    祭司に両親が出歩くのを留めるよう命じた…後日祭司の家に盗みに入った賊によって3人とも死んだ。

    全力を尽くし盟友と伴に闘った……死の運命からは逃れられなかった。

    どれ程生まれが違っても、どれ程環境が違っても、生きとし生ける者は皆が死ぬ。
    それが理だ。定められた事項だ。神の血を継ぐ我でも死からは逃れられなかった。

    故に死の訪れだけは何者にも知らせず、我自身介入することも辞めた。


    それを分かっていながら我はー



    『伏せろ、リリィ‼』
    『!』

    王の財宝が放たれる。
    以前の雑魚に向けて放った時とは違う全霊の射撃だ。
    全てがAランク以上の宝具を100本以上、リリィの周囲の空間を埋め尽くすように射ち続ける。
    爆撃の隙間を縫って少女の元へ駆け寄り、その体を抱き締めた。

    『ひゃ!?ぎぎ…ギルガメッシュさん!?』
    『話は後だ‼警戒を怠るな‼』

    腕の中にある命の温もりに安堵しながらも、我の抱いた恐怖が幻想では無かった事を確認する。
    リリィの周囲に撃ち込まれた宝具の内の1つに鮮血と黒い布切れが付着していたからだ。

    仲間達は誰一人怪我などしていないし、黒い布切れなど身に付けていない。
    それがこの場に見えない敵が居ることの何よりの証明になった。

    (何故姿が見えない?それ以前に…何故気配さえー)

    気配遮断スキルーアサシンの英霊が持つスキルの1つを思い出し襲撃者の正体を看破する。
    この街で、この時代で、霧に紛れて女を狙う暗殺者など一人しか居ない。

    『ジャック・ザ・リッパーだ‼全員密集隊型を取れ‼』
    『ヘラクレスはマシュの傍に‼クー・フーリンはメディアを‼』
    『おうよ‼』
    『了解です‼』

    デミサーヴァントとキャスターが結界を張り、我もリリィの周囲に自動防御の宝具を展開する。
    しかしー

    『きゃぁ‼』
    『痛てぇじゃねえか‼』

    結界が完成する寸前に襲い掛かった影がキャスターの肌に傷を付け、すれ違い様に狂犬の肩を刺す。となれば次に来るのはー!

    『させるか‼』

    自動防御だけでは温い…そう感じた我は天の鎖を展開する。
    目標が見えない以上籠のように取り囲む形で展開するしかなく、アサシンは難無く鎖を足場にして飛翔するー

    『馬鹿が‼』
    『………ぁぁぁ!?』

    天の鎖に何者かが触れた瞬間、我は自動防御の宝具から雷光を放った。
    如何に最上位の防御宝具でも姿無きアサシンには当てられん………が、天の鎖は別だ。
    鎖を伝って流れる電撃はそれに触れていたアサシンの肉体に牙を突き立て、一瞬だけその姿を我の眼前に曝す。

    (幼児………違う、亡霊の類いか‼)

    身長は140にも満たないだろう童児の肉体。
    全身を黒い襤褸布で被いつつも両手に握ったナイフだけは隠せていない。

    恐らく奴はジャック・ザ・リッパー本人ではない。
    しかしかの殺人鬼が殺した相手は全てが女、それも全員が娼婦だったと聞く。
    この時代に確実な避妊手段は無かった事から考えれば………あれはジャック・ザ・リッパーによって殺された胎児の亡霊が反英霊として形を為したものだと想像がつく。

    雑種もその姿を視認し、敵の情報を確認するが……

    『駄目だギルガメッシュ‼ステータスが全く見えない‼』
    『何だと!?』

    マスターの眼でも読み取れない……つまり特別なスキルか同等の効果を持つ宝具を所有しているという事が判明し我は自身の不利を悟る。

    アサシンは最弱の英霊と呼ばれているがそれは単純な戦闘能力面のみの話だ。
    マスターを殺せば戦わずして勝利を手に入れられる事、毒や罠等の搦め手に秀でること等を鑑みれば下手な強者より余程厄介だ。

    さらに拍車を掛けるのが敵の頭脳……強固な盾を誇るデミサーヴァントと最強の肉体を持つヘラクレスには近付かず、狂犬とキャスター、そして我とリリィの4人に的を絞っている!

    せめてリリィだけでもデミサーヴァントの結界の中へ避難させたいが、下手に防御を薄めればその隙に殺される!

    (どうする……どうする……!どうすればいい……!?)

    防衛の最中、打開策を模索する我の頭の中でーーー


    “解っているだろう……我よ”


    もう一人の我の冷酷な声が淡々と響いていた。

  • 22 ヘタレイ王 2017-04-03 23:04:17 QB8cupSE6sJJ156

    “解っているだろう……我よ?”

    幻聴……ではない。これは確かに我の声だ。
    冬木の街にて破壊と暴虐の限りを尽くした暴君、冷酷無慈悲な我の側面。

    愉悦のみを求め、飽きれば踏みにじり嘲笑う……我の真実

    “その小娘一人見捨てれば片は着くぞ?そもそも先の砲撃……その未熟者毎撃ち抜けばアサシンを殺せた筈だ”

    アサシンの英霊は敏捷に優れても耐久値は低い。筋力も並だ。
    威力・範囲ともに規格外の王の財宝を凌げるアサシンの英霊など……それこそ冠位の称号を持つ者以外に有り得ない。

    だがーー

    (駄目だ……リリィを見殺しには出来ん!)
    “何を惜しむ?騎士王の代わりに妃にでも迎えるつもりか?”
    (違う‼)

    あぁそうだ、認めよう……我はリリィに惹かれている。
    退屈凌ぎの玩具……最初はそんな認識だっただろう。
    欲望のままにその身体を物にしようと考えたことがないとは言わん。

    だが今は……!この我は……‼


    “何が違う!?小娘一人に牙を抜かれた腑抜けが‼我の名を語るなど烏滸がましいわ‼”
    『ギルガメッシュさん……?』


    アサシンの攻撃は止まず、我の身体にも決して浅くない傷を付けていくが……それが何だと言うのだ?

    脳内に響く我の声に押し潰され無いよう……大地を固く踏み締める。
    左手に抱いたままのリリィを……決して離さんと一層強く抱き締める。

    そして……右手に一振りの黄金斧を取り出し、声高らかに叫んだ。



    『我が王だ…英雄王ギルガメッシュだ‼この娘を護ると、我自らが決めたのだ‼』

    我が定めた我の法………それこそが絶対と豪語するなら、この決定に口を挟むことは何人にも許されない‼

    雑種ならば為す術なく敗北するだろう。
    だが我は負けん!
    凡骨ならば勝つために全てを犠牲にすることも有るだろう。
    だが我は違う‼

    真の強者は………勝ち方さえも選べるのだから‼


    『貴様ら‼我を仲間とするなら………余波で散るような無様は曝すな‼』
    『やべぇ!掴まれキャスター‼』
    『⬛⬛⬛⬛⬛………ッ!』


    狂犬が魔女を抱えて跳び…デミサーヴァントと合流したのを確認し、右腕に握る宝物に魔力を籠める。
    真名解放など我には出来ない……が、それが何の障害になる?

    夜霧に紛れる小賢しい鼠も、我に異を唱える暴君の声も、我の迷いも、リリィを脅かす脅威も全て………嵐とともに振り払う。

    『キャァァァァ‼』
    『う………あぁあああぁぁぁ‼』
    『⬛⬛⬛⬛⬛‼』
    『あの馬鹿‼』

    余りの衝撃に雑種達も無傷とはいかなかったようだが、その甲斐はあった。
    街中を覆っていた深い霧が霧散し、アサシンの姿を我の眼前に曝し出す。どうやら建築物の壁を蹴って飛翔し、直撃を回避したようだが………


    『!?霧が………』

    その身を隠蔽し続けた霧を喪っては………勝ち目など一欠片も与えはせん!

    『リリィ‼』
    『お任せを‼』

    敏捷に優れるリリィを先行させる。
    恐怖はある………だが我は信じている。

    我が惚れた女は、殺人鬼程度に負けはしないと‼

    アサシンの表情に焦りが見える。如何に英霊でも蹴り出す物がない空中では無防備だからだ。
    しかしリリィの攻撃を回避できないと見るや………冷静に反撃に転じる。

    『はぁぁぁぁぁぁぁぁ‼』
    『えぇぇぇぇぇぇぇぇい‼』

    選定の剣が振るわれる………全霊の速力と筋力を総動員させて
    血に飢えた凶器が振るわれる………全身のバネと反射神経を総動員させて

    衝突の瞬間、アサシンは微笑する。
    知名度補正を受けた自分の霊格は姫騎士を上回っている。真っ向からの衝突でも敗北はー


    次の瞬間、“魔力放出”によって加速した選定の剣がナイフを砕きアサシンの身体に深々と食い込んだ。

    『な………』

    その一撃は霊核を砕き、致命傷となった。
    しかし、念には念を入れておかねばならん。何より………我の溜飲が収まらん!

    『思い上がったな‼』

    エヌルタの灰油を始めとした加護を重ね掛けし、身体能力を格段に向上させた状態でアサシンに斬りかかる。
    宝剣の一振りに始まり、戦斧の振り上げ、魔槍の一撃が一瞬でアサシンの肉体に叩き込まれ、彼方へ吹き飛ばしー


    天の鎖が、王の臣下に手を出した狼藉者を磔にする。
    瞬時に展開された王の財宝の照準は………1度捉えた標的を逃しはせん‼

    『消えろ………亡霊‼』

    死霊・霊体殺しの宝具、その中でも最上位の武具のみを選りすぐり掃射する。
    狙い違わずその全てがアサシンの肉体に突き刺さり、完膚なきまでに破壊する。


    『お母……さん……』

    消え逝く少女の霊に、我が祈る事などない。それは聖女や司祭の役割だからだ。
    だが、せめてもの慰めを口にするー

    『母の元へ逝くのだ………笑え童児よ』


    それが届いたのかどうかは知らんが………消える寸前、少女の口許は緩やかな曲線を描いていた。

    霊基の消失を見届けると同時に緊張がピークに達し、我は膝を着く。


    (………………運命に勝ったのか………?)

    ジャック・ザ・リッパーによるリリィの殺害はこれで防いだ筈だ。
    これで未来はー


    『あっ………』

    リリィの戸惑うかのような声が聞こえた瞬間、我は全速力で振り返りその手を取って………



    『リリィィィィィ‼!‼!?』
    『ギルガメッシュ………さ………』




    ーーーー我が鮮血を噴き出して倒れた。




    結論から言おう、リリィは死ぬ運命では無かったし千里眼の見せた光景も間違いではなかった。

    我が見た光景は………リリィの服が裂け、腹回りを鮮血が染めている光景だったのだ。
    そう、アサシンとの剣劇はリリィの勝利だったが………その際に服が余波で裂けてしまった。
    そしてそれに気付いたリリィは慌てて左手で裂けた布が覆っていた部分、つまりは胸元と腹部を隠していたのだが………それを怪我と勘違いした我が左手を引いてしまい………


    (え、じゃあ我の早とちりだったの?全部!?何これ恥ずかしーーーー)


    意識が暗転する寸前、我が認識できたのは二つだけ。
    羞恥に顔を染めながらも我を気遣って走り寄る最愛の姫騎士の姿と………脳内に響く我の溜め息だけだった。


    英雄王ギルガメッシュとの絆………4

  • 23 ヘタレイ王 2017-04-10 10:05:36 vJ8hOnLU691gSLF

    第4の特異点を修正し数日が経った。
    姿を表した宿敵の影、その置き土産の呪いで死の淵へと落ちながらもマスターは這い上がってきた。

    そこまでは良い、対峙しただけで殺されかけたのは相手が相手故に仕方無いだろう。
    だがーーー


    『デミサーヴァントに想いを伝えるのに良い方法を教えろだとぉ!?』
    『わぁぁぁぁぁ‼ギルガメッシュの馬鹿‼誰かに聞かれたらどうするのさ!?』

    マスターの私室に呼ばれたかと思えばまさかの恋愛相談とは………こやつ脳細胞だけ呪い殺されたか?

    『他に適任が居るだろうが、贋作者に言え贋作者に』
    『いや、最初はそう思ったけど………エミヤに相談するのは駄目だと直感が………』

    ぼそりと聞こえた女難という単語で全てを把握する。
    まぁ仕方あるまい、スキル使う度に癖が悪いと自認してるし………是非もない。
    しかしかといって我に聞くのはどうなのだ?

    まさかこやつも狂犬や作家どもと同じく我とリリィの事をー

    『だってギルガメッシュ………モテたでしょ?』

    うん、駄目だこの雑種早くなんとかしないと。
    恋愛云々以前に前提が間違ってる。典型的な勘違いだ。

    『雑種………言っておくが我は貴様らの言う恋愛経験など無いぞ?』
    『え………ぇぇぇぇぇぇえええええ!?』

    盛大に溜め息を付きながら雑種の息が切れるのを待ち、一つ一つ訂正していく。
    まず我は生前多くの女を妃に迎えた。
    あらゆる快楽、あらゆる娯楽を喰い漁ったのは紛れもない事実だ。

    しかしーそこに恋愛感情など無かった。

    『王の寝所に呼ばれると言うのは女達にとって至高の名誉故な、誰も我を拒む者は居らんかった。しかしそれは我の時代、我の国に限っての事だろう?時代が変われば倫理も趣向も変わるのが道理だ』

    そう、かつて冬木で騎士王と合間見えた時の我は忘れていた。
    至高の王とて所詮は異国の主、ウルクの民草は兎も角ブリテンの主だった騎士王が我に従うなど力で屈服させる以外に有り得ない。

    そして力で相手を傾げさせる関係を恋愛などとは言わない。
    王は人の心が分からない………うん、全くだ。耳に痛すぎて死にたくなる。

    閉話終結、つまり我には雑種の悩みに対して実体験に基づく有効なアドバイスなど送れる筈がないのだ。
    まさか雑種の口から『マシュ、今夜俺の夜伽の相手をしろ』等と言わせて事態が好転するなど有り得ない。前進したならそれは惚れた相手の精神が汚染されてるだけだ。

    『じゃあ………俺、どうしたら良いんだよ………』

    余程宛が外れたのだろう、雑種の落胆ぶりは凄まじかった。
    踏まれれば踏まれるほど強く反発する人類最後のマスターと同一人物だとは到底思えないほどに。

    ーーー『世界の行く末を掛けた闘いの最中に女に熱を上げてる貴様が悪い』

    以前までの我ならばそう切り捨てただろうに、代わりの言葉が口から出ていた。


    『焦るな、先が見えないなら歩き続けた道程を見返せ………貴様が女と伴に歩いてきた道をな』

    雑種が顔を挙げるより早く、我は席を立ち場を離れる。
    ドアを閉める寸前に聞こえた力強い声を………戯けと笑い飛ばしながら

  • 24 お団子の旅団団長リオ☆ 2017-04-10 10:50:29 5SB8MWkmTbhuPPu

    この王、やっぱりイケメンだ…!(お疲れさまです!)

  • 25 ヘタレイ王 2017-04-21 09:23:31 ulqscV39WYEJwc

    雑種の部屋から離れ、自室へと戻るまでの傍らー

    『もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ』
    『こらセイバー、御代わりならまだあるから落ち着いて食べないか』

    『だから‼私の武器は信仰の加護だと言ってるでしょう!?』
    『えぇ~本当にござるかぁ?』

    『えうりゅあれ、えみやからクッキー貰った。いっしょに食べよう』
    『しょうがないわね、じゃあ中庭でお茶にしましょう』

    『切嗣~♪』
    『!?何故僕の名前を……いや、人違いだ。僕はしがない暗殺者で……』

    『へぇ流石は伝説の大海賊だ‼いい呑みっぷりじゃないか‼』
    『止めろ惚れちまうだろうが(はぁ~?BBAに褒められても嬉しくないですしおすし)』

    『マリーマリーマリーマリーマリーマリーマリーマリーマリーマリー』
    『おぉぉぉジャンヌゥゥゥゥ‼我が聖処女よ‼』
    『シグルドシグルドシグルドシグルドシグルドシグルド』
    『安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様』



    自室へ戻り、扉を閉めた瞬間叫ぶー



    『……………………どいつもこいつも頭の中が春か!?』

    雷光と女神は構わん、あれは幼児達故に自由にさせればいい。
    しかし他の‼他の連中はなにをしてるんだ‼英霊だろうが貴様ら全員‼中には神霊まで居たぞ!?

    我達は皆、過去の存在だ。
    この身体を形成するのは魔力で、流れる血潮も人間のものとは似て非なる物だ。その魂は英霊の座に汲み上げられ人類史が続く限り磨耗することなく保管され続ける。

    それが…何を色恋沙汰に感けておるのか!?
    まだ特異点は残ってる。
    やがて我一人では手に負えん存在が敵に回る可能性とて捨てきれん。
    総てを修復する前に雑種が死ねば?2017年が訪れてしまえば?

    人類はそこで途絶えるのだ‼判っているのか奴等は!?


    (いや……しかし我とて……)

    脳裏に浮かぶ少女の姿を消そうと頭を振るう。
    雑種にも言ったが我は恋愛などしたことがない。そもそも出来なかったと言うのが正しい。

    王である我の命は臣下にとって絶対で、対等な立場に居たのは盟友だけだった。
    そして我とエルキドゥとの間に在るのは絶対の信頼と友情、親愛の類いだ。

    恋愛とは対等な立場の者同士が行うもの……唯一対等な存在だった友とさえ恋には落ちなかったのだ。その我が今更どの面を下げてー

    その時、今まで自分が口にしてきた事の矛盾に気付く。


    ーーー“至高の王とて異国の人間”
    “我はリリィに惹かれている”
    “我を仲間とするなら”ーーー

    我は王だ、それは絶対に…………例え世界が滅びても変わりはしない。
    王が頭を垂らす存在など居ない。
    しかし…ここには我の臣下も居ない。


    居るのは…………力の上下はあっても、対等な立場の存在だけだ。

    国が違う。
    時代が違う。
    人種が違う。
    信仰が違う。

    無関係ならば…………そもそも対等に決まっている。

    『ハッ…………ハハハッ、そうか…………我も奴等と対等か…………』

    雑種と嘲笑った。
    有象無象と侮った。
    全てを選択するのは我の一存だと傲慢に振る舞った。

    それが何故こうも、他の英霊と自分が対等だと認めてしまったのに…………心穏やかに笑えるのだろうか?


    未だに躊躇いはある。
    暴君としての我が居たという事実は消えない。
    我は英雄王で在り続ける。

    それでも…………


    無意識に自室を出た我は彼女の存在を探してカルデアの中を散策する。
    本当は走り回りたかったが、王としてのプライドがそれだけは許さなかった。
    王の財宝は使わず、自分の身体1つで、心1つで探して…………


    『あっ……ギルガメッシュさん!』

    視界に映る彼女の存在は何よりも輝いて見えた。
    手に入らないかもしれない、傷付けてしまうかもしれない、それが何よりも恐ろしく思う。

    今のままで、ただの仲間として…………全ての特異点を修復するまでを供にするだけで満足すれば良かった。

    けれど…………




    『リリィ…………我と…………』



    それでも、欲しいと思ってしまった。


    英雄王ギルガメッシュとの絆…………5

  • 26 はなの魔術師 2017-04-21 09:42:30 t0qx2xshrFFb6Z

    今回も執筆お疲れさま、ヘタレイ王くん
    しかし、この世界最古の不器用王サマは……やっと気づいたのか!という感じだね(ニヤニヤ)

    ……あ〜、私も恋がしたい…

  • 27 ふぇいます 2017-05-24 23:36:44 r7t2EY903e8VBmu

    更新待ってます
    終わってたらすいません

  • 28 名無し 2017-07-06 18:14:00 GXanptZQlLskgqC

    更新待ってます❗️

  • 29 ヘタレイ王 2018-02-01 23:47:12 D081CRl3Hc5bTJ9

    人は弱い…故に理想を謳う。
    人は弱い…それ故に仲間を作る。
    その思想を嗤うことはない。その行程を蔑むことはない。

    しかし、これは何だ?
    今、

  • 30 ヘタレイ王 2018-02-02 00:09:51 D081CRl3Hc5bTJ9

    今、我の前に広がる光景は…リリィの前に広がる惨劇は何だ?

    救いを求めて、砂漠を越えてきた民草が、それを上回る灼熱に焼かれた。
    絶望を浴びながら、安住の地を求めて辿り着いた母親が、幼児の前で首を狩られた。

    我は暴君…英雄王ギルガメッシュだ。
    故に、この陰惨極まりない光景さえ認めよう、それが人の性だと。
    だがこの光景を視るのは…我だけではない。
    隣に居るのは、未熟極まりない1人の少女だ。
    いずれ歴史に名を遺すとはいえ今はただ1人の少女だ。

    それに、今…何を見せている?

    『これより獅子王の命により…聖罰を始めます』
    『あぁ悲しい…貴女はこういうべきだった、決して動くなと』
    『おのれ…おのれ貴様ら‼』
    『嫌だ、助け…‼』

    粛々と、正義のために振るわれる刃が鮮血を散らせる。
    ただただ、生きたいと願った命は散らされて逝く。
    この中でなにより鮮明に響くのは、それらを救える存在となるべき筈の少女の悲鳴。

    『止めて…逃げてぇ‼』


    我は、特異点に置いて積極的な介入は避けていた。
    慢心ではなく、ただの事実として…我がどれ程の力を持ち、かつ異端であるかを知っていたからだ。
    我が軌跡を刻むことを赦されているのは盟友と駆け抜けた神代の景色しか有り得ぬと。

    しかし、これは…この景色は、この悲鳴は…

    原初の扉が開き、忠義故にその瞳を潰した騎士の行く手を阻んだ。
    人の温もりを拒絶するが故に美しい筈の黄金の武具が…憤怒の熱に沸き立っていた。

    『何なのですか?貴方は…我が王の裁定に異を唱えると?』

    あぁ、認めよう太陽の騎士よ。
    貴様は正しい。
    万人に批難されようと貴様は正しき道を貫くだろう…貴様の王に捧げた、曇りなき道を。

    ただ、1つ誤算だった。
    貴様らが行く道は、貴様らが踏みにじる景色は…‼

    『皆さんが笑って、暖かい食卓を囲める景色が一番幸せだと思うんです』

    姫騎士が夢に描いた、拙いながらも尊い景色ならば…‼

    『貴様は…我の女を泣かせた…‼』

    我が貴様らの前に立ちはだかるのは必然だった。

  • 31 椿芽 2018-02-02 00:28:54 sHqwVF5hjBWuYvbT

    懐かしい方が、…

  • 32 K 2018-02-02 00:56:26 HI6iLHujikyFEf0Z

    (アカン) アカン

    cccエア不可避ですねこぉれは(確か強制即死のリザ不可のダメージカンストだったかな)

  • 33 ヘタレイ王 2018-02-02 21:24:23 Bl7kyEbMvKQAzxEP

    *暫くガチ戦闘part(*・ω・)


    雨霰やと降り注ぐ黄金を回避し、円卓の騎士達は駆ける。
    太陽の騎士は無論だが弓の名手たる嘆きの騎士さえ遠距離では叶う見込みが無い。
    音速を越えて飛来する宝具の数々は大気を震わせる…その衝撃の前では音の刃は掻き消される。

    それでも世界に名高き円卓の騎士、並の英雄では為す術もなく射ぬかれるだろう死の嵐を掻い潜り黄金の英霊に斬り掛かった。

    『それだけの破壊力…至近距離では易々と撃てませんね?』
    『弓兵が剣を使えないと思いましたか?』

    ガウェインの太刀筋は実直であるが故に重く、トリスタンの刺突は躊躇いなく急所へと迫る。
    共に最上位の騎士に相応しい必殺の剣劇を前にして尚―

    『貴様らの物差しで我を測るな…雑種‼』

    黄金に輝く破壊の雨が降り注ぐ。
    その数、実に48本。全てがAランク宝具による無情の爆撃だ。

    トリスタンは退く…勝負を急く必要はないと冷静に
    ガウェインは振り下ろす刃に更なる力を籠める…聖者の数字による祝福ならば耐えられると踏んで

    その選択はどちらも…間違いだった。

    ギルガメッシュには最初から判っていた。
    二人がこの状況でどう動くか…手に取るように把握出来ていた。

    眉間へと迫る聖剣にギルガメッシュは退かない。
    それどころか自ら近付き、その懐へと踏み入る!
    驚愕に目を見張るガウェインの体躯の下へ滑り込み拳を振り上げる‼

    『ぐっ…ぁ⁉』

    鳩尾へと吸い込まれた拳の衝撃は聖騎士の鎧でも完全には防げず、その両足が地を離れた瞬間ギルガメッシュは次の手を打つ。

    『丁度いい、貴様傘になれ』
    『なっ⁉』
    『ガウェイン卿‼』

    左手をガウェインの喉笛に添えるとギルガメッシュはそのまま彼の身体を持ち上げて頭上に掲げる。
    そこに降り注ぐのは当然…王の財宝‼

    宝剣が、魔槍が、装飾斧が、鎧を貫きその下の肉体にまで突き刺さる。
    聖者の数字による加護は確かにガウェインの肉体を高みへと押し上げる。それこそ日中は3倍の力を誇るとまで吟われる程に。
    しかし…彼は知らなかった。

    ギルガメッシュの火力は…並の英霊の5倍と恐れられていることを。


    『がぁぁぁぁあ‼』
    『フハハハハ!中々に堅牢ではないか‼褒めてやるぞ狗‼』

    辛うじて致命傷には至らない。
    しかしこのままでは黄金の英霊の手で引導を渡されるのは必然。

    『ガウェイン卿を放ー⁉』
    『良かろう』

    戦友を救わんと駆け寄るトリスタンへ、造作もないとばかりに騎士の身体を投げつける。
    80㎏を越える肉体にそれを覆う鎧、更には突き刺さったままの無数の武具まで加わればその重量は100㎏では収まらない。

    そんな過重量をぶつけられれば如何に歴戦の騎士とて体制を崩され…

    『そら、見舞いの品だ。喜べ雑種』

    再度開かれる黄金の波紋。
    そこから何が放たれるのか等、その場の誰もが判っていた。

  • 34 名無し 2018-04-09 00:39:41 RNnwvu4YDK1OPQ1Z

    王よ………
    次の更新をまっております………

  • 35 ヘタレイ王 2018-04-18 17:06:09 bNdxnAIR53O61kjd

    大気を裂き、地を穿ち、粉塵を巻き上げる黄金の絨毯爆撃。
    絶え間無く続くそれはもう猛攻…等と形容できるものではなかった。
    英雄王の怒りとは即ち蹂躙、指向性のある天変地異とでも言うべきか。
    嵐を前に立ち向かう人間など居ない。豪雨を全て受け切る規模など人は持ち得ない。

    粛清騎士の指先は剣を保持することを忘れ、難民の足は逃げ惑うことを放棄した。
    ギルガメッシュの力を知っている立香やリリィさえ知り得なかった今の彼の姿…大気を震わせる覇気と燃え盛る憤怒を目にしては致し方無いだろう。

    現実にして数分間、しかしその場に居た者全てにとっては数時間にも感じたであろう嵐が止む。
    陥没した大地の上で、満身創痍ながらも…しかし彼等は生きていた。

    『ぐ…ッ』
    『これ程とは…‼』

    全身に突き刺さる無数の宝具、渇いた大地に吸い込まれる鮮血…端から視れば彼等は弱者だろうが真実は異なる。
    世界最高峰の知名度、武功を誇る円卓の騎士だからこそ原型を留められているのだ。
    それが解っているからこそギルガメッシュは距離を詰めない。
    殺すと決めた“敵”の力を見くびらない。嗤うのは体幹から首をもいだ後だ。

    『大したものだな…我は貴様らを細切れにするつもりで宝物を放ったのだが、よもや五体が繋がっているとは』

    巻き上がる粉塵と爆撃音の中でもギルガメッシュは視ていた。

    太陽の騎士は同胞に投げ付けられた直後、傷を庇う素振りもなく空へと聖剣を解き放った。
    嘆きの騎士もまた彼の意図を察し自らの宝具を足元の地盤へ放ち、切り込みを入れたのだ。

    迎撃も防御も儘ならない最悪の体勢から、それでも彼等は生き延びる選択をした。
    灼熱の極光は降り注ぐ黄金の刃の一部を吹き飛ばし…その余波で脆くなっていた彼等の足場は爆撃に曝される前に“引っくり返った”。

    結果…二人の騎士は岩盤を緩衝材代わりに直撃を避け、諸ともに吹き飛ばされることで回避するという方法で命を繋ぎ止めた。
    まさに一騎当千、最強の騎士団の精鋭として相応しい実力者。
    彼等の敗因は唯一つ…ギルガメッシュの力を知らなかった事に他ならない。

    『貴様等の様な強者を辱しめるのは好かん』

    黄金の英霊の言葉は寛容だった…背後に拡がる波紋さえ無ければ。
    先の暴威から生還するのに全霊を費やした騎士と無傷で対峙する王の構図。
    振り下ろされる指先が死刑を宣告する。三度放たれた“王の財宝”を前に二人は為す術もなくー





    『もう止めてください…ギルガメッシュさん!』


    自分達を庇い立つ少女の背中を…いずれ王となる者の後ろ姿を見詰めていた。

  • 36 ヘタレイ王 2018-04-18 19:12:00 bNdxnAIR53O61kjd

    それは余りにも無謀な行為だった。
    マスターである立香は勿論、満身創痍の騎士二人にも彼女の行動は信じられなかった。

    鎧を纏っていても解る華奢な身体だ。
    剣を握るより花束を握る方が似合う…戦士ではなく護られるべき存在だ。

    それなのに何故……彼女は微塵も震えないのだろうか



    “王の財宝”の勢いは止まらない。その破壊力と総数は先程よりも更に上回るだろう。

    円卓の騎士最強と吟われる湖の騎士、ランスロット卿の剣裁きでも撃ち落とし切れる保障はない。
    聖者の数字による加護を得た全霊の“転輪する勝利の剣”でも半数消せれば上出来か、それ程までに理不尽な力が目前に迫っている。

    ガウェインにもトリスタンにも解る…少女がか弱き存在ではない事が、自分達と同じ英霊だと解る。
    だが同時に…膂力も技巧も火力も速度も耐久性も何一つ‼自分達に勝る要素が無いことも解る‼
    圧倒的な力の前に奇跡など起きない‼
    大河の氾濫した先に花が咲いていようと、無垢な子供が笑おうと、無慈悲に呑まれるだけだ‼

    それなのに何故…畏れないのだ⁉

    視界を覆い尽くす黄金の輝きが少女の肉体に突き刺さるー







    寸前、展開された黄金の波紋がそれら総てを音もなく回収した。





    『……は?』
    『馬鹿な……』

    それは誰の口から零れた言葉か。そしてどんな意図を口にしたものか。
    破壊の嵐を生むも消すも自在な黄金の英霊、ギルガメッシュの力への畏怖か。
    果たまたそれを予期していた少女の先見に対する感銘か。

    唯一つ解るのは…円卓の騎士二名が存命なのは彼女の存在によるものだと言うことのみ。
    その場の誰もが息を飲む中で、英雄王が問い質す。
    眼光は紛れもなく憤怒の色を帯びている。
    唇の微細な変化さえ見逃しては死に直結するだろう確信がある。

    『我が止めなければどうなったか…解っているな?』
    『はい……』
    『何故その者達を庇った?偽りは赦さん』

    半神の王が投げ掛ける問いに…“未来の王”が答える。


    『彼等は私の同胞です。それを裁くのは貴方じゃない…騎士王の務めです‼』

    視なくとも判る…彼女は誇り高く、強い眼をしているのだと。
    それを唯一視ていた王は口元を引き締めた直後…天を仰いで笑い始めた。

    『クハハハハハハハハ!そうだ、解っているではないか‼それでこそ王だ‼』

    孤高な王が居た。
    愚かな王が居た。
    配下に殺された王が居た。
    民草に見棄てられた王が居た。

    それでも誰一人として、その責務を他者に明け渡した王は居なかった‼

    『まだ私は王じゃないですよギルガメッシュさん?』
    『今はな、しかしいずれ至る…我の前に畏れず立つ気概を持つ者が!王に成れぬ道理は無い‼』

    数分前までの殺伐とした空気など無かったかのように笑い会う一組の男女に…太陽の騎士が問い掛ける。

    『我々を生かすと言うのですか…虐殺を犯した我々を』
    『逆上せるな雑種‼貴様の都合なぞ我が考慮するものか‼』

    暴君一喝、内容は最低なのに反論さえさせてはくれない。そもそも答えてもくれない。
    代わりにガウェイン達に答えたのは…白百合の如く可憐な姫騎士。

    その表情からは王の風格が見て取れた。

    『赦したのではありません…今は難民の方々を優先するだけです。次に会うとき…私が裁く』

    その言葉を最後に二人はゆっくりと踵を返し、少年と盾持ちの少女に合流すると難民達を誘導し始めた。

    『追わないのですか…ガウェイン卿?』

    脚を引き摺りながら立ち上げるトリスタンの進言は正しい。
    城内にはまだ無傷のランスロットとアグラヴェインが、郊外には遊撃兵のモードレットが居る。
    英雄王の力は強大だが“獅子王”の聖槍…その権能を以て当たれば勝機は見出だせる。

    しかし……

    『今は兵を退きましょう…柄にもなく陽に宛てられた様ですので』

    眩しかったのだ、彼女の姿が…我が王に与えられた日輪の祝福に匹敵する程に。
    まるでそう…無垢な子供達が夢に観るような…理想の王を直視した気がしたのだから。

  • 37 ヘタレイ王 2018-06-14 11:41:12 yNgt1oMDxuhUEeZ

    聖都を脱してからの行軍はとても苦しいものだった。
    立香と英霊のみならず多くの難民を伴っての行動だ…リスクは数十倍にも上るだろう。
    安住の地と信じていた場所で起きた惨劇は弱者から僅かばかり残っていた希望を根刮ぎ奪い取り、苦しみに満ちた現況は変わらない。心を壊され自害した者も少なくはなかった。

    それでもリリィは笑っていた。
    自身の兵糧を子供達に与え、脚を患った老人に肩を貸し、魔物に遭遇した際には果敢に剣を振るった。
    ルキウスと名乗る得たいの知れない雑種とも直ぐに打ち解け、路頭に迷っていた僧の英霊とも笑みを浮かべて言葉を交わし、反乱軍の首魁である暗殺者でさえもその姿は刃を納めさせた。

    リリィは希望となったのだ。
    裏切られた者達には女神と心酔する者もいた。
    立香も無意識に…我ではなく盾持ちでさえなくリリィに真っ先に意見を求めるほどに。

    その有り様は美しかった。強かった。何より優しかった。

    だからこそ、我は……それを忌まわしく思った。



    時は数日過ぎ去る。難民橘を無事に避難させ、暗殺者達の協力も得て、更には1つの敵拠点を落とし捕虜となっていた二人の英霊をも救助するという大戦果。
    反乱軍のみならず死に体と成り果てていた難民達の瞳にも光が宿った。

    その夜、救助された弓兵は神から授かったという無限の食料を生み出す宝具を存分に奮い、その場にいた全員の心と腹を存分に満たした。
    英霊も立香も盾持ちも…心の底から笑っていた。例え一夜限りとはいえ地獄にも等しい現を楽園と出来た事に…


    だが我は知っていた。1人だけ、ただ1人だけ…胸の奥底で泣いていた者の事を


    我は敢えて思う存分に宴に加わった。
    握り飯を喰らいながら酒を煽り、肴が足りんと叫び宝物蔵から北風のテーブルクロスを取り出して皆に振る舞い、高らかに笑い飛ばした。

    そして数時間後…人も英霊も、見張りを残して皆が寝静まった頃合いを見て我は腰を上げた。

    向かう先は当然、最大の功績者のいた集落の端の丘だった。

  • 38 ヘタレイ王 2018-06-14 13:02:17 yNgt1oMDxuhUEeZ

    難民達、だな(*・ω・)なんだ難民橘って…全国の橘に申し訳ない

  • 39 ヘタレイ王 2018-06-17 10:54:12 7Vz4JWWdxfRHAGa

    遠くを見通す。人ならば見えぬ遥か先…聖都の灯火を見詰める。
    あの場には未来の自分に従事していた騎士達が居る。
    太陽の騎士ガウェイン、嘆きの弓士トリスタン…収集した情報によれば黒騎士アグラヴェイン、湖の騎士ランスロット、反逆の騎士モードレットの5名。いずれも間違いなく円卓の騎士達が。

    彼らは皆、卓越した力量と騎士として相応しい礼節を備えていた…その筈だった。
    ならばあの惨劇は?彼等に命じたのは獅子王と呼ばれている事しか知らないが…おそらくはアーサー王に他ならないだろう。

    私は…あんな非道を彼等に命じたのか?
    何故?どんな理由で?他に方法はなかったのか⁉

    深く深く思考の奥底へ意識を向けていたリリィの無防備な首筋にー


    触れる、冷たい感触

    『きゃぁぁぁぁぁぁ⁉』

    慌てて振り向けば、両手にグラスを持った黄金の英霊…ギルガメッシュが居た。

    『おぉ、予想外の肺活量に我もびっくり。危うく溢すところであった』

    苦笑しながら隣に座り込み右手のグラスを手渡す。
    キンキンに冷えたグラスに満たされた透明な液体からは清涼な甘さとやや強いアルコールの香りがした。

    『これは…日本酒ですか?』
    『うむ、あの弓兵の雑種の俵は中々の物だぞ。穀物のみならず酒や魚に根菜も取り出せる』

    ギルガメッシュが軽く指を鳴らし王の財宝を展開する。
    お握りや焼き魚、煮物と言った和食の数々を載せた大皿と日本酒の入った大きな盃が静かに並べられた。美味しそうな香りに思わず空腹を覚える。

    『最大の功績者の居ない宴なぞ気泡の抜けた麦酒の様なものだ、我の酒に付き合えリリィ』

    円卓の騎士2人を蹂躙した猛者としての威圧感などなく、柔らかな笑みを浮かべてグラスを掲げる。
    その笑顔を見た瞬間、先程までの息苦しさが雪のように溶けていくのを感じながら…

    『…少しだけですよ?』

    2人の持つグラスが心地よい軽音を鳴らした。



    『美味しい…これもこれも全部美味しいですよ、ギルガメッシュさん!』
    『貴様は見とらんだろうがな、その握り飯…あの方向音痴の雑種が握ったものだぞ?』
    『え、桶一杯のお米を宙に投げて空中で全部⁉形も均一に⁉』
    『あれは一種の魔術…いや、英霊自体が魔術の粋だが何かがおかしいな』
    『御釈迦様に教わったんでしょうか?』
    『永く険しい道程の果てに教わったものがアレなら我は釈迦を斬り捨てると断言しよう』

    他愛のない会話と美味しい食事、それはあまりにも平和で優しい時間でー

    ふと、視界が涙で滲んだ。
    何故聖都を治める王は難民達の大半を見捨てたのだろうか?
    あれだけの規模の都市ならば兵糧も水源も相応に備わっている筈なのに、ほんの1杯の水も1枚のパンも与えられればー

    『リリィ、酒は呑まんのか?我が至高の美酒には及ばずとも中々の味だぞ…』

    必死に嗚咽を飲み込み、ギルガメッシュさんの顔を見る。
    彼が満点の星空を見上げている今のうちに涙を拭おうとすると…

    『そのままで良い、聞け』

    ギルガメッシュさんは自身のグラスに酒を注ぎながら話し出した。

    『人の生み出すものには価値がある。その中でも特に我は酒が好きだ』

    酒は良い、甘く疲れを溶かし…硬い口許も緩む。
    酒は良い、頬が紅陽しようと何の不自然もない。

    そして何よりー

    『酒は良い…酔いのせいにすれば、普段は口に出来ない言の葉も滑らかに発せられる』

    既に何十杯も呑んでいる筈なのに、ギルガメッシュの顔色は何一つ変わっていない。
    到底酔っているように見えないのに…彼は自分は酔ってると言いながら話続けた。

    『英雄は功績を遺し、咎人は拭えぬ罪を犯す。
     だがな…善行のみ、悪行のみを為した者なぞこの世には1人として居らんのだ』

    善のみを為し、間違いを0ぬ者など…それこそ理想の中でしか有り得ないのだと、かつての騎士王は認められなかった。故に苦しみ、1度過去の改竄を試みたのだ。

    『リリィ、貴様は理想の王を目指しているのか?
     何事も間違うことなく、常に緩むことなく、正しき王を目指すのか?』
    『願ってはいけないんですか⁉』

    リリィのグラスが激しく揺れ、中身の大半が大地に染み込む。

    『私は助けたかった‼難民の人達全員、誰1人死なせたくなかった‼
     問い詰めたかった‼あんな非道を行った、行わせた王に‼真意を聞きたかった‼』

    自分がもっと強ければ‼それこそギルガメッシュの様に総てを手に入れた絶対者であればー‼

    『我は間違えたぞ』
    『……ぇ?』

    神の代行者として産まれ、人の心など知ろうともせず圧政を敷き、友を得て初めて王としての器を磨いた。
    国は栄え、あらゆる財宝と武具を蔵に収め、人々はギルガメッシュを讃えた。

    しかしーイシュタルとの因縁によって唯一の友を喪い、不老不死を求めて1度国を捨てた。
    その旅路の果てに…総てを視た者として完成し、国を再生させた。それがギルガメッシュの軌跡だ。

    『我は理想の王ではない、最も強く最も古く最も栄えた…ウルクの王だ』

    多くの間違いを認めながらも言い切るギルガメッシュの瞳は…美しかった。

    『なら私は、私は何を目指せばいいんですか⁉』

    ギルガメッシュさえ届かなかった理想、ならば自分は……

    『貴様自身が認めれば良い』

    震える頭に大きな掌の感触が当たる。
    無意識に地面を向いていた事に、そして今ギルガメッシュに頭を撫でられていることに気付いた。

    『有り得ぬ理想などではなく、貴様が胸を張れる…貴様に恥じぬ王になれ。
     形あるものはやがて悉く滅びる。それは必然であり悪ではない。結末でなく周りを視ろ。
     今、貴様の周りには笑みが溢れている、それは誇らしき事に思うが…貴様も笑え』

    だから呑め、そう言いながら新しいグラスに日本酒を注ぎ渡される。
    リリィは涙を袖で拭うと、それを一息で飲み干した。



    『………しょっぱいです』
    『……まず顔を拭け、涙が拭い切れとらんぞ』

    これでも使え、と言って差し出されたフォウ(匂いに釣られて今しがた来たようだ)の慌てっぷりと真面目に提案しているギルガメッシュの表情を見て、リリィは心の底から笑った。

    2杯目に飲んだお酒は…とても甘く感じられた。


    英雄王ギルガメッシュとの絆…6

  • 40 ランサー(料理人代理) 2018-06-17 11:58:15 M94wQnLwHjRo3m0

    (おや?これは絆10まで行く感じですかね……?)

    • 41 ヘタレイ王 2018-06-17 13:30:08 VVp6kbmyTwxBi9

      >>40

      時間は掛かるがな(*・ω・)SSは好きだし

      • 42 ランサー(料理人代理) 2018-06-17 17:11:12 8pUEx4tccxLNq7

        >>41

        おぉ!それは楽しみですね!個人的に次の舞台がどの特異点になるかが気になります!(ここはやはり第七特異点でしょうか……?)

  • 43 ヘタレイ王 2018-07-12 15:44:07 r7rp1x3wfbo7Ej

    幕間~輝ける黄金の二大王


    『雑種、我は単独行動を取るぞ』

    獅子王打倒に向けて戦力増強に動こうと決めた立香へ向けて、当たり前の様にギルガメッシュは言葉を紡ぐ。困惑を浮かべる一同へ英雄王は続けて話す。

    『貴様らは暗殺者共と動け。我はあのライダーに用がある…序でに条約を結ばせておけば一石二鳥であろう?』
    『そんな急に…しかも1人でなんて危ないよ⁉』
    『我の身を案ずるか?それとも魔力の供給か?何れにせよ我には無用だ』

    弓兵の英霊が保持するスキルの1つ…単独行動。
    マスター不在でも現界を可能とするこのスキルを最高位で保有するのが英雄王ギルガメッシュが数多持つ強味の1つだ。
    黄金の波紋から呼び寄せた“天翔る王の御座(ヴィマーナ)”に腰を降ろすギルガメッシュに向けて様々な視線が向けられる。

    それら総てに…黄金の英霊は唯一言のみ返した。

    『我に任せよ、なに…貴様らが危惧する事なぞ有り得んわ』

    問答無用とばかりに舟は離陸し、瞬く間に加速した。
    抑えきれない憤怒を紛らわせるかの様にー




    死の大地も灼熱の風も王の進撃は止められない。
    立香達と数日掛けて踏破した距離も半刻足らずで“天翔る王の御座”は駆け0。
    汗1つ流す事なく舟を降りたギルガメッシュは臆する気配もなく当然の様に巨大な黄金神殿へと踏み入る。

    無論分かっている…此こそは太陽王の宝具にして固有結界“光輝の大複合神殿”(ラムセウムテンティリス)。
    この中へ踏み入ることは怪物の胎内へと呑まれるに等しく、神殿の主はその力を最大限に発揮出来る。並の英霊では侵入する事が即敗北に繋がる事を。

    慢心ではない、無謀でもない…英雄王の脚を進ませる感情は怒りだ。
    聖都へ行けと、かの王は言った。
    そこで行われていた暴挙を立香は、マシュは、そしてリリィは見た。

    無論、それは必要な行為だった。
    特異点を復元するには現状を知らねば対処など叶う訳が無いのだから。

    それでも…それでもギルガメッシュは怒っていた。
    激情のままに乖離剣を抜き放てばどれ程爽快かと内なる感情は叫んでいる。

    だがそれは獅子王を利するのみで、それはリリィとルキウスから決戦の場を奪う行為なのだ。
    故にギルガメッシュは最強の切り札を封印してその場所へ立った。
    太陽王…オジマンディアスの玉座の間へ。



    『此度は謁見の許可など無かった筈だが?』
    『王は何者の顔色も窺わん』


    太陽王は玉座から見下ろす。
    その全身からは最上位の英霊に相応しい覇気と力が止めどなく溢れている。
    しかし、対峙するは英雄王…英霊としての格は何者にも劣りはしない。

    『用件は分かっておろう?でなくば…従者を下げる意味が無い』
    『無論…従わせようと言うのだろう、このオジマンディアスを』

    互いに殺気を隠すことなく二人の王は言葉を交わす。

    『案ずるな…此度は私闘…殺し合う訳ではない』
    『ならば決着は如何に定める?』

    ギルガメッシュは自らの上半身を覆う鎧を外し、蔵へと納めながら宣言する。

    『貴様の勝利条件は我に傷を付けること、でどうだ?』
    『ほぅ…では余をこの玉座から降ろせば貴様の勝ち、でどうだ?』

    オジマンディアスは玉座へ深く座り直しながら答えー

    その身を玉座が受け入れた刹那、二人は動いた。


    太陽王の玉座…その頭上に輝くデンデラの大電球から雷光が放たれる。
    それを予測していた英雄王の周囲に展開された自動防御宝具(オートディフェンダー)から同じく雷光が放たれ、その軌跡を剃らす。


    貴金属が融解する独特の匂いを感知しながら、二人は笑う。

    『ククク…クハハハハ‼』
    『フフ…フハハハハハ‼』

    笑わずには居られない。
    互いに誓約を掛けながらも、全霊を掛けなくばならない…互いの力量が理解できる故に‼
    笑わずには居られない。
    絶対強者であるが故に満たされなかった欲求‼それを満たせる機会が得られたことに‼

    恐れずには居られない。
    早期に決着を着けなくば…本能のままに殺し合うのが目に視えているこの瞬間を‼



    『その上案…撤回は認めんぞ‼』
    『王の決断は何者にも覆せんわ‼』

    太陽の王は座したまま錫杖を振るい、自らの忠実なる僕を呼ぶ。
    英雄王は駆けながら宝物庫に手を伸ばし、一振りの宝剣を握り締めながら呼び掛ける。



    ー“熱砂の獅身獣(アブホルスフィンクス)”‼


    突如として召還された神獣、オジマンディアスの誇る最強の僕ー“熱砂の獅身獣”
    それは獅子の体躯と人の貌を持つ聖なる獣。最強の幻想種である竜に次ぐ怪物。

    神殿内に呼び起こされた獅身獣の数は13…如何な英雄であろうとそれは脚を止めさせる脅威であり、オジマンディアスの勝利を約束させるに相応しい力だった。






    そう、唯一人…英雄王を除いては




    ーー“天の鎖”よ‼

    対神宝具…天の鎖。
    その真名を彼は呼ばない。
    その真価は発揮されることはない。


    そこに何の問題も生じないからだ。
    如何に強大な力を持とうと意味を為さない。
    如何に不死身と称される生命力を持とうと意味を為さない。

    唯、神性を帯びているだけで、身動ぎ一つ取れなくなればー




    獅身獣に脇目も振らず、ギルガメッシュは駆ける。
    デンデラの大電球から止めどなく放たれる雷光は自動防御宝具によって迎撃され、王の肌に届かぬまま金を溶かすのみ。



    ギルガメッシュの脚が、その爪先が玉座へ続く階段に触れる。
    3段飛ばして次の段差を踏もうとした瞬間、“闇夜の太陽舟(メセケット)”が突貫してくる。

    ランクにしてA+を誇る、最上位の対軍宝具。
    太陽の如く輝く天翔る舟…第2の玉座とも呼べる至宝を“1人の男にぶつける”為だけに放つ愚行。




    そんな理不尽としか形容できない攻撃を、同じく“天翔る王の御座”をぶつける事で相殺するなど誰が想像出来るだろうか?



    互いの舟が亜光速で衝突し、粉微塵に砕ける。
    鼓膜を破かんとする爆音も、立ち込める黄金の粉塵も…認識しない。
    一瞬でも目を離せば、意識を他に寄せれば…敗北するのが解っていたからだ。


    数十分の一秒、瞬く間にギルガメッシュは玉座へと駆け上がり…左手に握る剣を振るった。
    聖剣の原典ー“原罪(メロダック)”。それは数多の宝具の中でも最も名高き…英雄の代名詞ともされる剣の頂点に君臨する至宝。

    対するオジマンディアスは右手に握る錫杖に渾身の力を籠めて迎撃する。
    如何に純金の、それも数百年の時を経て尚も輝く錫杖とて“原罪”には敵わない…





    飽くまで、宝具のランクに限った話だー



    オジマンディアス…それは騎士の英霊でありながら複数の、それも三騎士と称される英霊を総て相手取ってなお圧倒的な力を誇る規格外の英霊だ。
    生前において彼が愛用した弓は大の男が三人掛かりで漸く引き絞れたと詠われる程、身体能力においても優れているのだ。

    原罪は弾き飛ばされ、錫杖は砕けた途端に再生される。


    如何に至高の財を持とうが、それをも覆すだけの腕力を誇る太陽王に、切り札を使用せずに勝てる道理など有り得ない。






    ーーーもし、英雄王以外の、英霊であったなら、だ。


    『⁉』

    オジマンディアスは後方へと弾け飛ぶ“原罪”を視認した刹那に視た。


    視界を覆い尽くして尚も収まらない大剣、山を物理的に切り裂く“翠の刃(イガリマ)”の刀身を…‼

    『ぐぉぉぉぉぉ⁉』

    圧倒的な質量に依る蹂躙が、王の身体を、その玉座ごと切り裂く。
    爆音に次ぐ爆音。固有結界の外で起きれば数千㎞先まで響くだろう轟音は、しかしマスターである立香にも白百合の騎士の耳にも届かず総て…神殿内に木霊した。



    巻き上がる粉塵が晴れた後に二人の王は相対する。
    互いに無傷…オジマンディアスの攻撃はギルガメッシュに届かず、ギルガメッシュの攻撃もまたオジマンディアスを殺せない。
    “光輝の大複合神殿”の中でオジマンディアスは不死身。
    “翠の刃”に切り裂かれた直後に、それを上回る再生力が働いた為に王の肉体に傷を残さなかった。




    そう……その瞬間に勝敗は決していた。
    同じ目線に立つ太陽の王に、英雄王は言い放つ。


    『玉座を離れた貴様の敗けだ』…と。

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